沖縄のお餅「ムーチー」

ムーチーとは沖縄の言葉で「餅」もしくは「鬼餅」を指す沖縄の方言である。

 

沖縄のお餅は本土のものとは異なり杵などでつくのではなく、もち粉を水でこねて蒸したものが一般的である。

 

モチモチとして食感と素朴な味わいが人気である。

 

ムーチーは餅粉に水を加えて練り、平たい長方形にしてサンニン(月桃)とよばれる葉に包んで蒸したものである。

 

サンニンの葉の香りとお餅の甘みが見事にマッチして、子供から大人まで大好きな食べ物であり、ムーチーはサンニンの葉で巻くことから「カーサムーチー」と呼ばれることもある。

 

白糖味の白餅、黒糖味の黒糖餅、紅芋味の紅芋餅、ウコン味のウコン餅など主に3つの味が定番である。

縁起物のムーチー

沖縄では旧暦12月8日になると、このムーチーを縁起物として健康祈願や長寿を祈り、各家庭でたくさん作る風習がある。

 

かまど、神棚、仏壇、神棚などにお供えしたり、子供の健康を祈願して子供の年の数だけムーチーを吊るす「サギムーチー」とよばれる習慣もある。

 

家族みんなでこのムーチーを作って食べるのはまさに冬の風物詩ともいえるものである。

 

まさにこれを食べて沖縄にも冬がやってきたことを実感するのである。

 

その他にもはじめて赤ちゃんが生まれてムーチーを迎える家庭では、親戚や近所にムーチーを配って歩く習慣があり、これを「初ムーチー」とよぶ。

 

家庭によっては100個以上にムーチーを作るところもあり、まさに家族総出で準備をするのである。

沖縄本島の民話

ムーチーを作って健康や厄払いをする習慣は、沖縄本島の民話によるものであると伝えられている。

 

昔、首里に男とその妹が住んでいて、兄は大里村の洞窟に住み着き、夜になると鬼になって家畜を襲うことから村人から大里ウナー(大里鬼)と呼ばれ、恐れられた存在となっていた。

 

そこで妹は悪事ばかりする兄を退治しようと、サンニン(月桃)に包んだ鉄釘入りのお餅を兄に食べさせ、崖から兄を蹴り落として退治したのである。

 

このように鬼退治にムーチーが使われたことから「鬼餅」と呼ばれるようになったといわれている。

 

ちょうどその日が旧暦の12月8日であったことから、その日が厄払いの日となったり、家族の健康や無病息災を祈る風習が生まれたのである。