沖縄の身近な神様・火の神

沖縄では台所に、火の神が宿っていると考えられている。

 

この「火」とは「かまどの火」を意味しており、沖縄ではとても身近な神様なのだ。

 

つまりこの「火」によって家庭を温かく見守ってくださっていると考えられており、火の神のことを「ヒヌカン」とよぶ。

 

ヒヌカンは、火を取り扱うコンロの近くに祀ることが良いとされている。

 

色は全て白色で統一するが、これは神の衣類が白を基調としていることに由来している。

 

ヒヌカンに用意するものは、まずは湯のみにいれた水で、これは毎朝取り換える。

 

地方によっては家の人が朝起きて最初に蛇口をひねったときに出る水が良いという説もあるが、そうではなくてもよいという説もあり、どちらかといえば後者の方が一般的である。

 

沖縄では、古来から水はとても神聖なものであるといわれており、海、湧き水、井戸の近くには必ず御嶽があるほどで、まさに神聖なものの象徴である。

 

また塩を盛ったたかつきは、お清めの意味を表す。また繁栄を意味する花や香炉のほか、旧暦1日と15日には炊き立てのご飯をお供えする。

 

これがいわゆるヒヌカン神具のセットとなるのだ。

 

今でこそ台所にはコンロがあることが一般的であるが、かつてのかまどは3つの石を使っていたことから、ヒヌカンはウミチムン(御三物)ともいわれている。

ヒヌカンの役割

ヒヌカンは台所にお祀りすることから、防災にまつわる神と思われがちであるが、それ以上に深い意味がある。

 

もちろんそれを含めた災害から身を守ることでもあるが、家族の健康、心願成就、厄払い、安全などをお祈りする。

 

そしてヒヌカンはそれぞれの神様にそれを伝えてくれるので、決してヒヌカンの前では悪口をいってはならないとされている。

 

ヒヌカンを通すことで、墓参りやお盆に足を運べないときの先祖供養や、日常生活の健康や安全を守ってくれるのである。

 

このヒヌカンを祀るのは、代々女性がその役目と言われており、決して他人が拝むことはできないとされている。

 

沖縄の人にとってヒヌカンは、とても神聖な場所であり、他の人が触れる場所ではないと考えられている。

ヒヌカンの行事

ヒヌカンの行事の中でもっとも重要なのが、御願解き(ウガンブトゥチ)とよばれるものだ。

 

これは旧暦12月24日に行われるもので、ヒヌカンが天に帰って、その家庭で起きたことや願い事などを報告する日といわれている。

 

つまりヒヌカンの前で悪口を言ってはならないという理由は、ここからきているのである。

 

この日はヒヌカンの周辺を丁寧に掃除し、米、お酒、お金、果物、三段の餅をお供えして線香をあげ、一年の無病息災をお祈りする。

 

この日は地方におって少しずつ異なり、旧暦大晦日、元旦〜4日にかけて行われることもある。

 

また12月24日に御願解き(ウガンブトゥチ)を行ったら、今度は旧暦の1月4日に火の神迎え(ヒヌカンウンケー)を行う。

 

いわば天に帰っていったヒヌカンをお迎えする日である。

 

お赤飯や白米を用意して、お酒と線香をお供えする行事である。

 

新年に新たにお出迎えすることで、一年の平穏を祈願するのである。

「ヒヌカンシタティ」の意味

沖縄ではヒヌカンを仕立てることを、「ヒヌカンシタティ」と言い、家を新築したり、結婚、事務所を構えるときなどに、ヒヌカンを準備する。

 

近年ではユタとよばれる沖縄の霊媒師にそれを依頼することも増えてきている。

 

ヒヌカンを準備するときは、旧盆やシーミー祭は避けた方がよいといわれており、旧暦12月24日の御願解き(ウガンブトゥチ)や、旧暦の七夕の頃がよいといわれている。